膝の十字靱帯損傷後では、膝の傷みとグラグラ感(不安定性)が生じます。スポーツ復帰を目指すためには、通常は手術(靱帯再建術)が必要です。手術を成功させるためには下記の4点が特に重要です。
十字靱帯損傷の診断はMRIが必須です。しかしながら、十字靱帯の解剖学的な複雑さから、その走行を
熟知した専門の臨床放射線技師による丁寧な検査が必要です。せっかくMRIを撮影したのに肝心の十字靱
帯や半月板がうまく同定できていないこともあります。
当院では、三次元MRIにて十字靱帯損傷の構築を詳しく調べます。またCTによる骨・軟骨の評価もで
きます。
受傷後に太ももの筋肉がやせたり、二次的な軟骨損傷が生じる前に、できるだけ早期に再建術を考え
ます。正確な診断や手術が遅れたために、内側広筋の萎縮をきたし、手術後にも筋萎縮が残存する症例を
多くみます。
また、いたずらに長い期間の膝装具の装用も筋萎縮を来します。
手術においては、前十字靱帯を膝関節の中の、「どの位置(どのルート)」に再建するかを適切に
決め、正確に靱帯を通す(大腿骨・脛骨に正確に骨孔をつくる)ことが重要です。医師の感覚のみに
頼るのでは無く、最新のデバイスによる手術アシストは重要で、より解剖学的に正確な位置に靱帯を
再建できます文献1。
術後に再断裂を来さぬように、きちんとした十字靱帯の知識を得ること。専門のリハビリ医による
筋力強化や可動域訓練を術後早期から開始します。また長期にわたって、ストレッチを中心に、体の
手入れを怠らないことが大切です。
時に、左右両側の前十字靱帯損傷の患者様や、一側で3回靱帯再建術を行った患者様もあります。
十分な教育が必要です。
当院では高橋敏明医師(愛媛大学医学部)による膝スポーツ障害の専門外来(2019年4月以降。毎月1回、
第1土曜日、予約不要)を行っております。先生は、靱帯再建を正確に行うために、「関節鏡視下レーザー」
を用いた骨孔位置の決定と再建の方法を、独自に開発され世界に発表されました文献2。本法により極めて正確な
ルートに靱帯再建を行うことが可能です。また骨孔は関節内から作成するオール・インサイド法を行っており
ます。そのため骨損傷が少なく、通常の方法に比べて術後の痛みや出血を軽減できます。
前十字靱帯の再建は、手術枠に限界があるために白石病院では手術をうけられません。病院間の連携を
利用して、村上記念病院(西条市)にて行っております。術後のリハビリ(入院および外来)は白石病院
で行えます。
スポーツや日常生活で膝関節にお悩みのある患者様は、気軽に受診して下さい。